健康を左右する腸の7つのはたらき

腸のはたらきが健康に大きく関わることをご存知ですか?
「腸を整えると免疫が上がる」「腸がキレイだと美肌になる」などのフレーズを耳にしたり、整腸作用を促す健康食品やサプリメントなどの商品をを目にする機会も増えていると思います。
私たちが健康であるために、腸の機能はとても大切です。腸のはたらきが消化や排泄に関わるのは容易にイメージしやすいと思いますが、その他にも健康を左右する大切なはたらきがあります。今回は、7つの大切な腸のはたらきとそれをよくする方法についてまとめました。

健康を左右する腸の7つのはたらき

口から入った食べ物は消化管を通る旅に出ます。
食道を通り、胃から十二指腸、小腸へと進み、肝臓や胆嚢、膵臓の力を受けながら栄養素となってからだに入り、不要となったものは大腸へと進んでからだから出ていきます。その旅の中心になる腸には、大きく分けて7つの健康に関わる大切なはたらきがあります。

1 食べ物を「消化」する

腸は、お口から入った食べ物が最終単位へと分解されながら大腸に向かう消化の旅の中心です。口から入り胃を通過した食べ物は、まず十二指腸に入ります。ここで細かく分子サイズへと分解(消化)が行われます。その後に小腸に送られて行きます。

消化には、消化酵素と腸内細菌が必要です。
主には、ヒトのからだがつくる消化酵素の力を利用して消化を進めていきますが、食べ物によってはその自前の消化酵素だけでは処理できないものもあります。その時にはお腹の中にいる腸内細菌の力を利用しています。自前の消化力が足りないと、栄養を十分にからだに取り込めないため腸内細菌の力を借りて処理してもらうのです。
例えば、オリゴ糖や食物繊維は自前の消化酵素では消化できません。自分のおなかの中の腸内細菌の力を借りて分解(消化)してエネルギー源を作っていきます。

この仕組みはヒトだけではありません。パンダが笹を食べることは周知のことと思いますが、実はパンダも自前の消化酵素では笹を消化できず、腸内細菌の力を借りて分解(消化)をしているのです。

2 栄養素を「吸収」する

栄養素の吸収の入り口は、小腸です。小腸の粘膜の表面にある細胞から吸収されます。
栄養素はそれぞれの専用の受け入れ口から吸収されていきます。小腸に送られてきた消化物すべてが勝手にしみこんで吸収されていくわけではありません。からだに必要な栄養素を選別、コントロールしながら取り込んでいきます。
からだに必要か不要かを選別して振り分ける腸のはたらきは「神の手」とも称されています。このことからも、腸はからだにはとても重要な臓器であることがわかります。

3 からだが必要なものを「合成」する

腸と腸内細菌は、からだにとって必要な大切なものをつくりだす(合成する)はたらきもあります。腸でつくられる代表的なものをまとめました。

3-1 酵素をつくる

酵素は、私たちの生命活動のために行われている酵素反応のすべてに必要です。
呼吸や消化、筋肉の動きもすべて酵素による反応が行われています。そのうちの一部の酵素は、腸と腸内細菌が協力しながらつくっています。私たちが元気に活動するには、酵素を作り出せる良い腸内環境が大切なのです。

3-2 ビタミンをつくる

多くのビタミン剤が販売されているのは、私たちのからだにはビタミンが必要で、且つ不足しがちであることが分かっているからです。いくつかのビタミンは腸内細菌により体内でつくるのですが、腸の環境が良くないとそれらを上手くつくることが出来ないことがわかっています。
腸でつくられるビタミンには、ビタミンB群(B1、B2、B6、B12、パントテン酸、ナイアシン、ビオチン、葉酸)やビタミンKがあります。これらは、エネルギーをつくったり、肌や髪、骨や血液などを健康に保つのに大切なビタミンです。

3-3 ホルモンをつくる

ホルモンは、からだの各臓器に情報を伝えてそれぞれのはたらきを誘導する物質です。
例えば、「インスリン」というホルモンは膵臓でつくられます。食事をとると血糖値が上がりますが、その情報を受けた膵臓はインスリンをつくり、血糖が上がりすぎないようにはたらいてます。
その他にも多くのホルモンがあり、からだのいろいろな場所でつくられています。

腸でつくる重要なホルモンの一つには、「セロトニン」があります。セロトニンは気持ちを安定させてくれる指令を脳に出すことで有名なホルモンで、幸福ホルモンといわれたりもします。反対にこのホルモンがうまくつくれないと、うつのような症状につながります。
このホルモンは実は脳よりも腸に多く存在していて、脳への神経伝達指令と、蠕動運動というお腹の動きの指令を出しています。
腸の細胞や腸内細菌がうまくはたらきホルモンをつくることは、お腹だけではなく脳にも影響し精神面にも関係があるのです。

3-4 その他

腸内細菌によって、大腸で発酵されてつくられる様々な物質があります。
お腹の動きや肥満予防などに良いはたらきをする短鎖脂肪酸、抗酸化作用のある水素、アンチエイジング効果が期待出来るポリアミンなどがあります。

私たちのからだを守るさまざまな物質を、実は腸がつくってくれていたのです。

4 害のあるものを「解毒」する

からだに入ってきた有害物質、からだに溜まった有害物質、からだの中で発生した有害物質など私たちのからだはたくさんの有害物質の影響をうけています。
これらを解毒することは健康を保つために大切です。しかし、防腐剤・添加物・空気汚染・アルコールの多飲・薬の常用など現在の生活環境から有害物質をすべて除外することは難しいかもしれません。有害物質の増える環境に対して、からだは常に抵抗して頑張っていること考えると、デトックス(解毒)に関わる商品やサービスが流行ることも理解できますよね。

からだの解毒を担当しているのは、主には肝臓と腎臓です。そして、その肝臓をサポートするのが腸なのです。消化された栄養を最初に吸収する腸の粘膜がしっかりと整っていて、不要な有害物質が入ることをブロックできれば、その後の肝臓の仕事を軽くすることにつながるのです。

5 不要なものを「排泄」する

小腸で消化吸収された食べ物は、大腸の中を進みながらで便をつくり排泄されます。
便には、からだにとって不要なものや有害物質も含まれています。薬物や環境ホルモンなどの毒素もそうです。からだに害となるものは早く排出したいですよね。便秘になるということは、からだにとって害となるものを長く溜め込んでいるということになるので好ましくないのです。
スムーズな排泄のためには、大腸の中の腸内細菌のバランスが大切です。これには善玉の腸内細菌を増やす食事のバランスが影響します。

6 からだを守るちから「免疫」に関わる

私たちが健康に生きるためのシステム「免疫」には、腸のはたらきが大きく関与します。
免疫細胞の7割は腸に集まっていて、ヒトのからだにおいては最大の免疫器官になります。
私たちは、口から水分や栄養素だけでなく細菌やウィルスなどの病原体も意図せず摂り込んでしまいます。そこで、それらの要・不要を選別してからだへの侵入を防ぐために、腸には免疫機能が多く備わっているのです。腸の中にある免疫細胞と腸内細菌が、共に協力し侵入をチェックする門番の仕事をして、外敵からからだを守っています。

7 血液をきれいに「浄血」する

血液の質は、食べたものや腸内細菌の影響によって左右されます。
サラサラは良い状態・ドロドロは危険という表現で耳にしたことがあると思います。
血液には多くのはたらきがありますが、主たる重要なはたらきには、酸素・栄養素・ホルモンなどのからだがつくりだした物質を全身の細胞に運んで届ける運搬の役割があります。それには、サラサラの血液の方が当然流れの良い状態なのです。
前述の「消化」「吸収」「排泄」「解毒」がうまくはたらいて腸の状態が整えば、当然、血液の質もよくなることにつながります。

腸のはたらきを良くする方法

腸の中がきれいなこと、腸内細菌がバランス良く住んでいること、お腹の動きが良いことが、それぞれ良いサイクルを生み出して腸のはたらきを良くしています。

腸内をきれいに保つ

からだにとって不要なものを溜め込まず排出できること、つまり便秘にしないことが大切です。便を溜め込んでしまうと、腸内での発酵・腐敗が起きていくので、腸内環境の悪化を招くことになります。お腹の環境が良い時と悪い時で、おならや便の臭いに違いが出るのにはこんなことが関係しています。

腸内細菌を整える

腸内細菌は、善玉菌、悪玉菌、日和見菌のバランスが大切です。
腸の中には約1.5キロくらいの腸内細菌が住んでいるといわれています。
それらの理想的なバランスは、腸に良いはたらきをする善玉菌が2、悪い影響がある悪玉菌が1、強い方に加勢する日和見菌が7の比率(2:1:7)といわれています。この割合から考えると、日和見菌をどちらに加勢してもらうかが鍵になることがわかります。菌を増やす毎日の食週間が腸内細菌に影響しますし、食習慣を改善することで腸内細菌を善玉菌が多くなるように変えることが大切なのです。

腸の動きを良くする

腸は、尺取虫のように伸び縮みをしながら、胃から渡された消化物を移動させて便として排出させています。この動きを、蠕動(ぜんどう)運動といいます。この動きが悪くなるのには、腸内環境の悪化や、自律神経の乱れ、お薬の服用などが関係しています。
腸内細菌を整えて便秘知らずのおなかにする、自律神経のバランスが崩れないようにリラックスして過ごす、そして、薬のお世話にならない元気なからだでいることが大切です。
このことは、からだと心が元気であることが腸に必要であり、腸が良い状態であることがからだと心を元気にすることにも必要であることを示しています。
腸と脳は互いに影響し合う関係があります。「腸脳相関」と表現されて、共通のホルモンをつくるなどいろいろなことが解明されています。

まとめ

私たちの健康に関わるはたらきには腸が大切なことをご理解いただけましたか?
「消化」「吸収」「合成」のはたらきはからだを元気にしてくれますし、「解毒」「排泄」「浄血」のはたらきがスムーズならお肌もきれいになります。そして、それらのはたらきが良い循環を生み出し「免疫」の力も上がり抵抗力がつく、セロトニンによって心を穏やかに保てるなど、多くの効果につながります。

私たちの健康を守るために腸は頑張っています。
肌荒れやお腹のはりなど何かからだのサインが出た時に、腸はうまく動けているかな?腸はきれいかな?と、少し意識して過ごすきっかけになれば嬉しいです。