おなかの調子が良いということは、食べたものをしっかり消化吸収して不要なものを排泄していくからだの基本的なしくみがうまく動いていることになります。
腸に良い食べものというと、食物繊維などの野菜やヨーグルトなどの乳酸菌がまずは浮かぶと思いますが、その他にも腸が必要とする栄養素があることをご存知ですか?
腸の大切なはたらきをうまく機能させるために、からだをつくっている細胞は栄養素を使っていろいろな準備やサポートをします。
腸の状態がよくないときなどは、よりたくさんの材料(栄養素)を必要としています。材料(栄養素)が足りなければ、腸をうまく機能させることができないのです。
今回は、腸のはたらきに必要な代表的な栄養素とその役割についてまとめてみます。
「消化」のはたらきに必要な栄養素
タンパク質
食べ物を消化する自前の消化酵素の原料はタンパク質です。
私たちのからだは、食べ物から摂ったタンパク質から消化酵素をつくっています。消化がよくないからとお肉などのタンパク質の豊富な食材を避ける食習慣は、自前の消化酵素をつくる材料(栄養素)不足につながっていることがあります。
良質のタンパク質を多く含む代表的な食材例には、肉、魚、卵、豆があります。
鉄
鉄が足りないと胃液が出にくくなったり、腸管からの栄養素の吸収が悪くなったりします。また、下痢や便秘の原因になることもあります。
鉄を多く含む食材例には、豚・鶏・牛レバー、赤身肉、カツオ、あさりなどがあります。
「吸収」のはたらきに必要な栄養素
タンパク質
消化吸収の中心になる小腸の粘膜上皮は、グルタミン(タンパク質をつくるアミノ酸の一種)をエネルギー源として使います。
グルタミンは、ストレスや運動によっても失われやすくなります。
グルタミンを多く含む食材例には、鶏肉、ヨーグルト、未加熱のキャベツやほうれん草があります。
ビタミンD
栄養素が吸収されるのに大切な場所は小腸です。小腸の粘膜上皮の細胞を成熟させるのにビタミンDが使われています。また、ビタミンDは食事から摂ったカルシウムの吸収率をあげてくれます。
ビタミンDを多く含む食材例には、鮭、イワシ丸干し、シラス、キノコ類があります。
「合成」のはたらきに必要な栄養素
脳に指令を出すホルモンをつくるのにも材料(栄養素)が必要です
腸で多く作られる代表的なホルモンには、セロトニンがあります。
セロトニンは、幸福ホルモンとも言われたりする感情を安定させるホルモンです。タンパク質から形を変換させるいくつかの工程を経てセロトニンというホルモンになります。その工程にはいくつかの栄養素を使っています。
タンパク質
胃での消化によって変換された、トリプトファン(タンパク質をつくるアミノ酸の一種)が、脳に指令を出すホルモンの材料(栄養素)として利用されます。
トリプトファンを多く含む食材例は、魚介類、肉類、乳製品、種実類などがあります。
ビタミンB群、鉄
トリプトファン(タンパク質をつくるアミノ酸の一種)を変換していく工程には、ビタミンB群(ナイアシン、葉酸、B6)と鉄を使います。
ビタミンB群を多く含む食材例は、マグロ、カツオ、豚レバー、牛レバー、モロヘイヤ、春菊、サツマイモ、種実類などがあります。
「免疫」のはたらきに必要な栄養素
タンパク質
小腸にはたくさんの免疫細胞が存在しています。グルタミン(タンパク質をつくるアミノ酸の一種)は、免疫細胞のエネルギー源としても使われます。
ビタミンA
免疫細胞を増加、活性化させて粘膜のバリアとしてはたらく抗体をつくります。また、ホーミングといわれる腸管の免疫システムにも大切です。
ビタミンAを多く含む食材例は、鶏・豚レバー、うなぎ、モロヘイヤ、ニンジンなどがあります。
今回は、役割が特徴的なものを抜粋していますが、その他にも亜鉛やビタミンCなど腸のはたらきをサポートしている栄養素はたくさんあります。
まとめ
腸がはたらくためには多くの栄養素を必要としていることをお分かりいただけましたか?
私たちのからだは常につくり変えられています。
からだを構成している細胞が、たくさんの準備をして上手につくり変えようと頑張っています。そのためには、たくさんの材料(栄養素)が必要なのです。
今回、必要な栄養素として繰り返し出てきたタンパク質は、からだのつくり替えの基本になる栄養素です。先ずは、基本のタンパク質をしっかり食べて、そのタンパク質がしっかり消化吸収されるからだをつくることが大切です。そして、一緒に食物繊維をしっかり摂って腸をきれいに保つことも大切ですよね。
お肉、お魚、卵、お豆などのタンパク質とビタミンや食物繊維を含む野菜を毎日の食事に意識的に摂り入れて、元気にはたらける腸をつくってください。
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