肝臓と栄養

からだの疲れが取れにくくなった、食べているのに元気が出ない、お酒を飲んだ時の酔いが残るようになった…など、からだの変化をつい歳のせいにしてしまうこともあると思います。その理由には、肝臓の疲れが影響していることを知っていますか?

今回は、肝臓のはたらきと肝臓の負担を減らすことについて解説していきます。

1. 肝臓は無口なはたらきものである

肝臓は症状が出にくい特徴があります。沈黙の臓器とも言われるように、簡単に痛みを訴えたりはしません。黙々と、私たちのからだにとって重要な仕事を毎日たくさんこなしています。

肝臓は、からだに入ってきた原料(食べ物や薬など)の加工を行う工場のような場所です。24時間休まず働いています。

仕事をしすぎて疲れた肝臓は、やがて疲労感や倦怠感などのサインを私たちに出し始めます。

2. 肝臓のはたらき

肝臓には小腸から吸収した栄養などが動脈を通って運ばれてきます。からだに入ってきたさまざまな物質を必要な状態に加工してつくり替えていきます。それは、私たちの健康を守るために大切なはたらきです。大きくまとめると次のようなことです。

2-1. 代謝

食事から取り込んだ栄養素「糖・たんぱく質・脂肪」を体の中で使える形に変えて貯蔵し、必要なときにエネルギーとしてからだに渡します。他に、コレステロールなどもつくります。

2-2. 解毒

アルコールや薬、老廃物などの有害な物質を分解し、からだに影響をおよぼさないように無毒化します。

2-3. 胆汁の生成・分泌

肝臓でつくられた老廃物を排出したり、脂肪の消化吸収をするのに必要な胆汁をつくります。

2-4. 栄養の体内吸収の調整

例えば鉄の場合、ヘプシジンというホルモンをつくり、からだの中に必要以上の鉄が入らないように調整しています。

3. 肝臓が負担に感じること

肝臓に負担をかけることとは、つまり肝臓の仕事を増やすことです。肝臓の仕事を増やすことには次のようなものがあります。

3-1. 食べ過ぎ

過剰な栄養の処理をすることになるのでたくさん働くことになります。

3-2. 飲み過ぎ

アルコールの摂りすぎは分解・解毒の仕事を増やします。

3-3. カロリーの高い食事

高脂肪な食事などは他の栄養分よりも肝臓にとっては処理に手間がかかります。必要以上の量が入ってきた場合は、分解・排出の仕事が増えることになります。

3-4. 睡眠不足

活動エネルギーは肝臓に蓄えられています。起きて活動する時間が長ければ、寝ている時には減るはずの仕事のエネルギーを供給することが増えます。また、活動するということは、体の中の老廃物などの解毒処理の仕事も増えることにつながります。

3-5. 運動不足

適度な運動で筋肉を動かすと血液のめぐりが良くなります。反対に筋肉を動かさないと末梢からの血液の循環が悪くなるので、肝臓では血液を浄化する仕事が増えてしまいます。

3-6. 食品添加物・農薬など

からだが有害と判断するものは、肝臓が解毒して排泄できるように仕事をしています。

3-7. ストレス

ストレスを感じている時は、交感神経が緊張しています。肝臓は副交感神経によって指令を受けているので、働く機能が低下することにつながります。また、交感神経の緊張すると内臓の血液量が減少するので、肝臓の仕事のしにくい環境が増えることにつながります。

3-8. 薬の常用

多くの薬は肝臓で代謝・解毒されています。薬を常用している方はそれらの仕事も増えていることになります。

心当たりの生活習慣があれば、改善・調整することで肝臓を休ませてあげることができますね。

4. 肝臓に良い栄養素

肝臓のはたらきがスムーズに進むように、材料(栄養素)を補給して肝臓が仕事をしやすい環境をつくりましょう。但し、栄養素はバランスが大切です。一つだけを過度に摂ることは避けましょう。

4-1. ビタミン

ビタミンC・E・βカロテン(ビタミンA)などの抗酸化ビタミンは、肝臓がいろいろな仕事をする時に出る活性酸素を除去するために必要です。ビタミンB群も、エネルギーをつくるときなどになくてはならない重要なビタミンです。

4-2. タンパク質

肝臓の仕事にはたくさんの酵素を必要とします。それらの酵素をつくるのは、タンパク質です。傷ついた肝臓を修復するのにもタンパク質が必要です。消化吸収しやすい形で良質なタンパク質を摂りましょう。

4-3. ミネラル

肝臓が解毒に使う酵素を活性化するのにミネラルが必要です。マグネシウムや亜鉛は過剰でも欠乏でも解毒に影響します。また、セレンは、からだに溜まった重金属、カドミウムや水銀の排出に必要なミネラルです。

4-4. 食物繊維

腸内環境を整えることは肝臓の有害物質の処理を減らすために有効です。

4-5. その他

タウリン、オルニチン、セサミン、クルクミン、ウコン、インドール-3-カルビノール、リモネン、などサプリメントとして見かけることもあるかもしれません。これらの成分は、たくさんある肝臓のはたらきの一つ、例えば解毒などを助ける栄養素を補給することになります。

市販されているサプリメントは、持病をお持ちの方や内服中の薬がある方は、飲み合わせに注意が必要なこともありますので、主治医の先生に確認する方が良いでしょう。
先ずは、食事でアブラナ科の野菜、ハーブ、しじみ、ゴマ、などそれらを多く含む食品を摂ることをお勧めします。

5. まとめ

肝臓のはたらきが悪くなると、栄養代謝や解毒のちからが低下して疲れやすくなることを理解していただけましたか? 暴飲暴食は避けてバランスよく栄養をとること、適度に運動したり、ストレス緩和をすることは大切ですね。

肝臓の負担を減らす生活習慣や栄養の摂り方などを見直して、黙々と頑張る肝臓をねぎらってあげてくださいね。