歯磨き粉選びの落とし穴①

小川由香里

患者さんのメインテナンスを行なっていると、

「いや~ん!」という出来事に遭遇することがあります。

なかでも厄介なのが、研磨粒子の存在……。

一生懸命歯を磨いてきた患者さんの歯周ポケットの中から、

ごそっと出てくるのです。

 

これは、3倍のサージテルを使っているときから見えていました。

ポケットにエアーをかけるとすぐに見つかり、

スケーラーで探り出せばゴロゴロ出てきます。

さらに6倍に拡大すると、研磨剤が詰まっている歯肉は盛り上がって見えるし

ツブツブしたものが透き通って見えている!

あれは、恐ろしい光景です。

 

今、歯磨き粉はさまざまなものが販売されています。

予防に目覚めた患者さんのなかには高いものを購入される方もいらっしゃいますし、

「ホ・ワ・イ・ト・ニ・ン・グ」の文字には弱いらしい。

その系統は研磨剤たっぷりのものがほとんどですが、

どうしても手が伸びてしまうようなのです。

 

特にインプラントが入っている場合、

歯周ポケットの底から唾液が出ないため自浄作用がありません。

そこに研磨剤が入ってしまうと周りの細菌が繁殖してしまうので、

歯磨き粉選びはかなり重要です。

しかも研磨剤で補綴物を傷つけてしまえば細菌が付着するリスクはますます高くなる……。

そういった説明を毎回しているのですが、

まだまだ「ホ・ワ・イ・ト・ニ・ン・グ」の文字に負けてしまっているのです。

 

患者さんの歯周ポケットから研磨剤が出てくるたびに、

「私の歯磨き処方はまだまだだなぁ……」と反省します。