歯の喪失原因の大半を占める二大口腔疾患「むし歯」「歯周病」それらを予防するには、サリバコントロール・シュガーコントロール・プラークコントロール・パワーコントロール、この4つのコントロールが必要です。今回は、わかっていそうでわかっていない?「シュガーコントロール」についてお話します。
この記事でわかること
シュガーコントロールって?
普段、チェアサイドでどのように保健指導をされていますか?「甘いものは控えましょう」「甘いものは間食としてではなく、食事と一緒に摂りましょう」なんて声が聞こえてきそうですね。間違いではありませんが、どうして甘いものを控えた方がいいのでしょう?どうして間食としてではなく食事と一緒に摂る方がいいのでしょうか?
砂糖とバイオフィルムの関係
砂糖の含まれた食物を摂取すると、ショ糖を原料にして菌の産生する酵素により粘着性の多糖体(グルカン)をつくり、歯の表面で他の口腔内細菌とともに塊を形成します。これがいわゆるバイオフィルム(デンタルプラーク)ですが、ショ糖のない環境では歯の表面に付着する能力は低く、他の菌との結合や凝集はあまり見られません。
つまり砂糖の摂取習慣があるとむし歯菌が活性化し、多くのネバネバ物質をつくることで水に溶けにくい粘着性バリアとなり、バイオフィルム中の酸が拡散・中和されずに歯面に停滞するようになります。
砂糖がステファンカーブに与える影響
飲食回数が増えれば、プラークのpHが酸性に傾く回数が増えるのは周知のことですね。「食後すぐ」「食後2時間」「食後8時間」ではプラークのpHも異なるため、飲食の摂り方・回数がカリエスリスクに大きく影響することがわかります。
それだけでなく、砂糖の摂取回数が増えると、舌や粘膜上の細菌が急速に酸を産生し唾液のpHも低下するため、唾液緩衝作用を減弱させる要素にもなります。3週間ショ糖洗口を続けるとステファンカーブの最高値と最低値が低下するというデータもありますし、砂糖濃度が高いほどプラークのpHは下がり中和に時間がかかります。
飲食回数に関わらず、砂糖の摂取習慣やその種類により酸性に晒される時間が増えることにもなります。1~2日砂糖摂取を制限するだけでもステファンカーブが変化するため、飲食習慣はカリオロジーにおいてもっとも重要な因子と言えます。
WHO(世界保健機関)「成人及び児童の糖類摂取量」の新ガイドライン
2002年以来、1日当たりの糖類摂取量について、 総エネルギー摂取量の10%未満に減らすことを推奨してきましたが、2015年の新ガイドラインでは5%未満。
つまり成人で1日25g(ティースプーン6杯程度)に減らすこととしました。このガイドラインは肥満や肥満に付随する疾患 NSD(非感染性疾患)だけでなく、むし歯を減らす目的もあり、それらを実現するには砂糖入り飲料を飲まないこと、ケーキ・菓子などの砂糖を控えることが必要です。2020年までに、NCDによる死亡が全死亡の75%を占めるようになると予測されており、WHOは2025年までにNCDによる死亡を25%減らすことを目標に掲げています。
WHOの定義によると、不健康な食事や運動不足、喫煙、過度の飲酒などの原因が共通しており、生活習慣の改善により予防可能な疾患をまとめて「非感染性疾患(NSD)」と位置付けている
グルコーススパイクとは
砂糖が含まれている食物を摂取する習慣があると、私たちの身体はそれに反応し、グルコーススパイク(血糖値の乱高下)が起こります。グルコーススパイクが起こると、亜鉛を無駄遣いしてしまうため唾液緩衝能が低下する要素にもなりますし、副腎機能が低下し免疫力にも影響するばかりか、血管が浮腫むことで弾力が失われ歯肉が傷つきやすくなったりもします。自律神経にも影響を及ぼすので、ブラキシズムを誘発することにも繋がるといわれています。
まとめ
「シュガーコントロール」は、むし歯の予防だけでなく歯周病や力のコントロール、全身の健康にも寄与するがおわかりいただけたのではないでしょうか。「甘いものは控えましょう」「甘いものは間食としてではなく、食事と一緒に摂りましょう」だけではない知識を身につけることで、患者さんへの提案の引き出しを増やすことができますね!
4つのコントロール「シュガーコントロール編」は2019年3月24日(日)開催予定です。
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