スタンダードプリコーション

手指衛生を院内で徹底するするための4つの方法

毎年10月15日はユニセフが設定した「世界手洗いデー」があります。手を洗うことによって防げる感染症があると世界中で手洗いの大切さを訴えています。歯科医院で定期的に手指衛生を見直し、メンバー全員で手指衛生徹底の努力をすることは自分自身と患者さんを守ることになります。手指衛生の徹底のために、「知識の確認」「方法の選択」「ふりかえり」「リーダーの模範」の4つを基盤にしています。ひとつひとつの方法について解説していきます。

「知識の確認」院内メンバーは正しい知識を持つ

手指衛生は、スタンダードプリコーション(標準予防策)で欠かせないものになっています。私たち医療従事者が気をつけなくてはいけないのは感染症を「もらわない」こと。

そして患者さんから患者さんへ感染症を「ひろげない」こと。そのためには手指衛生をしっかりと行うことが医療を提供する私たちの基本行為です。しかし、メディカルの現場でもデンタルの現場でも手指衛生の遵守はまだ100%となっていない現状があり、各施設で手指衛生の遵守を徹底するように努力をしています。

まずは何と言っても正しい知識を持つことが大切です。人は「なぜ?」の理由を理解することにより行動に移しやすくなります。手指衛生を行う理由をメンバーが理解をしているか確認をしてみましょう。

グローブにはピンホールがある

未滅菌のグローブで100枚あたり2.5枚、滅菌グローブでも1.5枚のピンホールがあります。ピンホールとは「針の穴」のような小さい穴のことをいい、日常臨床では小さな穴が開いていても気づかないで使用していることがあります。つまり、いつの間にか手が汚染されているかもしれません。グローブを外したら必ず手指衛生を行うのはこのためです。

グローブを外す操作で汚染される

患者さんの処置が終わった後、グローブを外します。この外す操作の際に手指が汚染されます。細菌を手につけたまま手指衛生なしで新しいグローブを装着すると、菌の増殖が起こりますのでグローブを外したら必ず手指衛生を行います。

「方法の選択」手指衛生を行う方法を見直す

多くの歯科医院では、アポイント時間内で診療を終える→片付けを行う→次の患者さんの準備をする→診療を始めるといった、一連の流れがあります。時間に追われていることの多い環境では、手洗いの時間が短くなりがちです。流水と液体石鹸による手洗いを確実に行うには手洗いに30秒、ペーパータオルで水分を拭き取るところまでを考えると1分はかかります。忙しい状況だと手洗いが雑になってしまう原因になるのは「時間」でしょう。

 流水と液体石鹸から擦り込み式アルコール製剤へ

2003年「医療現場における手指衛生のためのCDCガイドライン」の発刊により、従来基本とされてきた「流水と液体石鹸による手指衛生」から「擦り込み式アルコール製剤による手指衛生」が基本であることが示されました。

手指に、目視できる汚れや、血液や他の体液で汚染がある場合は流水と液体石鹸での手洗いが必要になりますが、目視できる汚れがなければ擦り込み式アルコール製剤で、手指衛生の対応をすることが推奨されています。擦り込み式アルコール製剤を用いた手指衛生を行うことで流水と液体石鹸で行うよりも時間が短縮でき、確実な手指衛生になります。さらにペーパータオルの消耗も軽減でき、ゴミと経費の削減にも繋がります。また、擦り込み式アルコール製剤は流水と液体石鹸よりも保湿剤が含まれているので手荒れを防いでくれます。

CDC・・・米国疾病予防管理センター

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擦り込み式アルコール製剤の配置場所を確認する

水道がないところでも場所を選ばず実行できるのが擦り込み式アルコール製剤の利点でもあります。院内の手指衛生の徹底のためにはメンバーの動線を考え、手指衛生に必要な場面ですぐに実行できるように院内に数カ所、擦り込み式アルコール製剤を配置することが大切です。

「ふりかえり」振り返る時間をつくる

1日の最後に今日の手指衛生は必要な回数ができたか振り返りをしましょう。アポイントの状態をみると最低限行わなくてはいけない回数が見えてくるはずです。達成できたか、できなかったか。それをメンバーで報告しあうことで手指衛生への意識も生まれます。

「リーダーの模範」リーダーが率先して行う

手指衛生を確実に行っている姿を仲間や後輩に見せることが大切です。メンバーはその姿を見て自分も手指衛生を行うことが当たり前の感覚になってきます。リーダーであるあなたが手指衛生を怠っていればその態度を他のメンバーも真似するでしょう。まずは自分自身が徹底することからです。

まとめ

日本の手指衛生の基本は概ねこのCDCのガイドラインが基本になっています。手指衛生は感染管理において基本中の基本で医療従事者であれば遵守項目です。手指衛生の徹底のためには「知識の確認」「方法の選択」「ふりかえり」「リーダーの模範」の4つを上手に院内で活用しましょう。

毎年5月5日には「世界手指衛生の日」、10月15日には「世界手洗いデー」があります。世界中で啓蒙活動が行われている「手指衛生」です。それだけ手からの感染は重要視されているということですね。まずは医療を提供している私たちがしっかりと認識をしましょう。

 

—  研修会のご案内  —

特定非営利活動法人日本・アジア口腔保健支援機構(JAOS) 第二種歯科感染管理者・継続セミナー
(ポイントセミナー)東京で講演をします。

※第二種歯科感染管理者の方は継続ポイント対象研修会です。
※資格を取得していない方も受講することが可能です。

タイトル:見直そう!改善しよう!感染管理対策
開催日:2018年12月13日(木)
時 間:10:00〜13:00
費 用:6,480円
会 場:東京都内

【主な内容】
①医院の感染管理を見直ししよう

・見直し改善チェックシートの記入
・医院の現状を確認する

②標準予防対策のおさらい
・世界基準の「標準予防策」
・標準予防策の3つの要点

③知って納得!器材の再生処理方法
・器材処理効果が変わる!ポイントを押さえた洗浄方法を知る
・目的に応じた消毒薬の選択方法
・滅菌器の特徴と滅菌バックの関係性を理解する

④フローで確認!見直し医院の消毒・滅菌法
・臨床現場で実際に使用しているシステムをご紹介
・臨床の現場でできることできないこと改善の工夫
・明日から改善できる消毒・滅菌の改善対策

【この研修会に参加すると】
・医院の感染管理の現状を見直しすることができます。

・器材の再生処理方法を共有することができ、効率化されます。
・具体的に何を改善すれば良いのかが明確になります。

【講師】
一般社団法人DHマネジメント協会 所属 長谷川雅代

歯科衛生士/日本医療機器学会 第二種滅菌技士

【お問い合わせお申し込みはこちらへ】
A.R.メディコム・インク・アジア・リミテッド【デンタル事業部】
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長谷川雅代

長谷川雅代

投稿者の記事一覧

歯科衛生士/DHマネジメント専属インストラクター
「自ら積極的に清潔を促す行動ができる歯科衛生士仲間を増やしたい」の思いで院内の感染管理の周知のために活動中。
年に数回の講座を担当し、訪問セミナーも行う。
日本医療機器学会 第二種滅菌技士
日本アジア口腔保健支援機構 第一種歯科感染管理者の資格を所持。

歯科衛生士として臨床も続け、感染管理を広める活動の傍ら、スラッシュキャリアとしてウェディングブーケデザイナーとしても活動中。

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