歯の喪失原因の大半を占める二大口腔疾患「むし歯」「歯周病」それらを予防するには、プラークコントロール・サリバコントロール・シュガーコントロール・パワーコントロール、この4つのコントロールが必要不可欠だと考えます。中でも一番馴染みの深い「プラークコントロール」についてお話します。
プラークコントロールって?
私たち歯科衛生士が毎日のように行なっているプラークコントロールですが、「プラークコントロールって?」と聞かれ、あなたならどう答えますか?
歯垢染色剤で染め出しをして、患者さんに鏡を渡して「ここに磨き残しがありますね~」とブラッシング方法や補助清掃用具の使い方などを指導する。
2色に染まる歯垢染色剤を使用し、青く染まったところを指して「これは古いプラークです」なんて言いながら、テクニックばかり指導して100%磨きを要求している方が多いかもしれません。
熱血歯磨き道場入門・・・という状況でしょうか。
原因を知る
患者さんの口腔内を拝見し、ある部位にだけプラークが残っている・・・
どうしてその部位に残ったのでしょうか?
現在、目の前で起こっている事柄において、どんな経緯と理由があるのかナラティブを探ります。
イマジネーションを膨らませ、自分なりの仮説を立てて検証できると、次に同じ事柄に遭遇した時にすぐに対応できるようになるでしょう。
例えば、右上下犬歯付近にプラークが残っていたら、右利きなのかな?と想像しますし、下顎臼歯部舌側に残っていたら、嘔吐反射があるのかな?低位舌なのかな?、上顎前歯部唇側や歯肉にまで残っていたら、上口唇の機能低下による慢性的な口唇閉鎖不全かな?と想像します。
粘度が高く厚いプラークが付着していたら、砂糖の過剰摂取を疑いますし、硬くて落ちにくい場合は唾液量減少や口呼吸による口腔乾燥があるのかな?と想像します。
ただ付いているものを落としたり、そのテクニックだけ指導しても、原因が改善されない限り結果には現れません。
機能・形態を知る
私たち歯科衛生士が毎日見ている歯牙ですが、1本1本形態が異なります。
もっと言うと、コーカソイドとモンゴロイドでは歯牙形態の特徴が違います。
唾液腺開口部から近い部位、遠い部位ではプラークの質が異なります。
付着歯肉幅が多い部位・少ない部位、骨隆起のある部位では、磨きやすさが変わります。
頬粘膜移行部、小帯に近接している部位では歯肉退縮が起こりやすいです。
歯冠部・歯根部では表面性状のテクスチャーが違います。
今、目の前で対象にしている部位の機能や形態などの特徴を知ることで、道具の選択や提案方法も変わってきます。
現在地とゴールを知る
毎回、プラークがごっそり残っている方っていませんか?
それを見て、気持ち悪くないのかな~なんて思ったりすることもあるかもしれません。
想像してみてください。
普段からプラークが赤かったり青かったりすれば、磨き残すことは稀でしょう。
そう、歯垢染色剤で染め出しをしている状態は非日常なのです。
1日に数回、毎日、毎週、毎月、、、
患者さんにとって歯磨きは、忙しい日常のほんの一部にしか過ぎません。
私たち歯科衛生士のように毎日歯のことばかり考えていない事実を知りましょう。
「歯磨きって何分くらいすればいいですか?」という質問よく受けます。
10分歯磨きすることより、きちんとキレイにすることが大切ですよね。
でも患者さんは、終わりの指標が欲しいんです。まずは、プラークフリーの状態を知っていただきましょう。
車の運転をする時に、現在地とゴールを知らされずに運転の仕方だけ教わっても迷子になってしまいますよね!
患者さんを迷子にさせないよう、現在地を把握し、ゴールを提示することが必要です。
目的を知る
そもそもプラークコントロールの目的はなんでしょう?むし歯の予防?歯周病の治療?病気を防ぎ発症させない、進行させないことが重要です。
プラークは残っていても病気になっていないラッキーな方っていますよね?逆に、すごくきれいだけどむし歯も歯周病も止まらない・・・なんてケースもあります。
両者に同じ指導でいいのでしょうか?
私たちがしなければならないのは、「プラークリムーブ」ではなく「プラークコントロール」です。ついているもの全てが悪なのではありません。
時に、プラークはフッ化物の貯蔵庫になったりもします。全てを悪とみなして躍起になって排除しようとすると、患者さんを置いてきぼりにしてしまうことがあります。
「歯医者に行くと怒られる」という印象を残さないよう、上手にプラークコントロールする必要がありますね!
2019年4月28日(日)DH勉強会LOLのご案内
学校では教えてくれない「プラークコントロール」を開催します。