ウォッシャーディスインフェクターをご存知ですか?略してWDと記載したりします。
医療器具専用の自動洗浄機のことです。この機械一台あれば器具の洗浄から消毒まで一気におこなってくれるので医療現場としては、「救世主」のような存在に思えて仕方がありません。人件費として考えると、かなり投資効果の高い製品であることも分かります。
ウォッシャーディスインフェクターとは
医療器材の洗浄、すすぎ、消毒、乾燥の一連の作業を自動的に行ってくれ、最終すすぎの段階で90℃以上の熱水を使用して消毒をするなど温度管理も自動制御されている点が食器洗浄器とは大きく違う「熱水消毒機」です。
負担が多い歯科医院の現場
歯科器材は鋭利なものが多いうえに患者さん一人当たりに使用する器具も基本セットだけで数種類ありますよね。大学病院や総合病院のように中央材料室として器具の洗浄や消毒滅菌を専門にしてくれるような部署を一般開業医では持ち合わせていないところが多いでしょうから、医療器具の再生処理はその歯科医院で働く歯科衛生士や歯科助手が行うことが多くなってしまいます。
人手不足の医院も多いと聞きますので、診療をしながらの器材再生は歯科医院のメンバーの負担になることが多いです。午前の診療が終わり、午後の診療までに滅菌を終わらせたい。そうして、消毒や滅菌を行なっていると、もう午後の診療の時間になってしまう!そんな医院もあるのではないでしょうか?
医療用洗浄器があるクリニックは器具を入れるだけで洗浄から消毒までおこなってくれますので、午後の診療にも十分に間に合いますし、メンバーも休憩をしっかり取ることができます。
鋭利な器具に触れる機会も少なくなりますし、嬉しいですね。
食器洗浄機とはなにが違うの?
汚れたものを自動で洗ってくれるイメージではすぐに思い当たるのが食器洗浄機ですね。結論からしてみると食器洗浄機とウォッシャーディスインフエクターは違います。
例えば食器に付着した汚れは主に油汚れと炭水化物汚れになります。ですので、使用洗剤もそれらの汚れを落とすような性質のものになっています。
さて、医療器具はどうでしょうか?
医療器具に付着するのは唾液や血液の体液になります。
これらの汚れはタンパク質汚れですね。洗剤を使うならタンパク質を分解してくれる性質のものを選ばなくてはいけません。
また、ウォッシャーディスインフェクターは最終すすぎの段階で90℃以上の熱水を使用して消毒をするなど温度管理も自動制御されている点が食器洗浄器とは大きく違うところです。
食器洗浄器を使用しているクリニックは?
医療用洗浄機(ウォッシャーディスインフェクター)を使用し、器具の洗浄から消毒を行うことが理想的ですが、なかなか理想通りにはいかない場合もあります。
食器洗浄器を使用しているクリニックはその洗浄レベルをしっかりと把握して使用することが大切です。
そのためには食器洗浄器の欠点を理解してそこをどのようにカバーするかを考えてみましょう。
当院の例を参考例として
私の在籍しているクリニックも実は医療用洗浄器(WD)ではなく、国産家電メーカーの食器用洗浄器です。使用済器具はまずはタンパク質分解酵素により浸漬洗浄を行います。
器具に付着したタンパクを落とすためです。その後、食器洗浄器に入れ洗浄をしますが、洗浄後は乾燥はできていませんので、まずは乾燥した器具用のタオルで拭いています。器具の水分をしっかりと除去してパッキングする工程です。
スケーラーやハサミ類は超音波洗浄器を使用したのち、ハサミはヒンジを開き、スケーラーは刃がぶつからないように専用のケースに入れて食器用洗浄器に入れます。
まとめ
医療用洗浄器(WD)が常設されているクリニックは洗浄器に入れる前に器材に付着した体液が乾燥するような状況になっていないかを確認をするようにしましょう。タンパクが乾燥により凝固してしまうと洗浄の効果が落ちてしまいます。
食器洗浄器のクリニックは医療用洗浄器との違いをどのようにカバーするかを検討してみましょう。食器用ではありますが、器材を用手洗浄することと比べれば洗浄時切創事故を予防できますし、器材洗浄時の毒性もありません。
ランニングコストも安く、人件費や時間の節約にもなるといったような医療用洗浄器と同等の利点もあります。
一般社団法人DHマネジメント協会
歯科衛生士 第2種滅菌技士 長谷川雅代
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