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歯科衛生士が栄養学を学ぶ5つの理由

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私たち歯科衛生士は、人の健康に携わる医療人です。口腔の健康を守りサポートする専門家ですが、診ているのは口腔だけではありません。実際の臨床では、動的治療時もメンテナンス時にも、口腔以外の環境因子なども総合的に診ているはずです。そして、そのうちの一つの視点として栄養学は役に立つと思います。

歯科衛生士が栄養学を学ぶ理由

「お口とからだはつながっている」「からだの健康はお口から」よく目にする口腔ケアの重要性を啓蒙する表記です。歯科衛生士は、口腔の健康をサポートしています。すなわち、健康をサポートしているのです。医院に来院される方の多くは健康に関心のある方だと思います。栄養学の視点は、臨床において役立つ知識になると思います。

1. 口腔の健康とからだの健康を守ることに役立つ

「健康」とはどんなことでしょうか?WHO(世界保健機関)は、「健康」を次のように定義しています。

 健康とは、病気でないとか弱っていないということではなく、肉体的にも精神的にもそして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること

では、「口腔の健康」とはどんなことでしょうか?FDI (国際歯科連盟)は、「口腔の健康」を次のように定義しています。

口腔の健康は多面的であり、話す、笑う、香りを感じる、味わう触れる、噛む、飲み込む能力と自信のある表情を通した感情を伝える能力を含み、しかも頭蓋顔面領域の疾患、疼痛、不快感がない状態にあること。
そして更なる特性として、 健康の基本的な要素であり、生理的、社会的、心理的価値を反映し、QOL の維持に必須の要素である

歯科衛生士の仕事である口腔の健康を守ることは、身体の健康の基本要素を守ることにつながっています。健康のために栄養を摂ることが大切なのは周知のことです。

そして、その栄養素は口腔粘膜や舌などの組織変化や、痛みや炎症などにも関わっています。栄養素に関する知識やその生化学的な背景を知ることは、口腔の健康を守るのに役立ちます。

2. 臨床の視点が広がる

臨床では、「木を見て森を見ず」とならないよう俯瞰的に診査診断することが求められます。森を眺めながら木が見れるように、口腔の問題に関係する環境因子を診ることに栄養学の知識は役立ちます。

3. 問診のヒアリングの幅が広がる

栄養学的視点からの問診は、患者さんの嗜好を知ることにつながります。歯のお痛みや症状について以外にも全身疾患に関連する問診は行なっています。さらに栄養学的視点からの問診を加えることで、食習慣や生活習慣の話から、患者さんの持つ健康観を知ることにもつながります。

4.   アドバイスの幅が広がる

問診のヒアリングの幅が広がることで、アドバイスの幅も広がります。
例えば、甘味嗜好が分かれば、糖質に関するアドバイスは口腔に関わる虫歯予防の話から血糖変動や糖化の問題などの身体に関わることまでアドバイスができます。また、健康を望む上で何を大切にしているかなどを知れると、治療やケアにおいても対応の優先順序を決めるのに役立つこともありますし、押し付けではない患者さんの思いに寄り添うサポートができるのではないかと思います。

5. 信頼関係や長期的な関係を築くのに役立つ

思春期、妊娠時期、子育てや仕事で多忙な時期、慢性疾患などで薬を常用している時など口腔内の反応に変化が生じることがあるのを体験したことはありませんか?それと同じように、身体にも変化があり、その背景に必要としている栄養素の需要と供給のバランスの乱れがあります。口腔だけにとどまらない知識は、健康を望む患者さんとの信頼関係や長期的な関係を築くのに役立つと思います。

臨床に栄養学的な視点をとりいれてみた体験

私には、20年以上継続してメンテナンスで拝見している患者さんがいます。長い年月の間にはライフステージの変化がありました。定年退職、大病による手術、療養もありました。笑顔で過ごしたいと趣味を見つけて楽しむ姿、持病により再び体調不良に悩まされる姿もありました。

そして、身体や心の変化した時期でも口腔ケアに通ってくださっています。入院中にも歯の問題なく食事ができてよかった、趣味の仲間から歯がきれいと言われて嬉しいなどお話くださる姿は、私の方が嬉しくなります。最近は、タンパク質を○g摂るようになって貧血が治ったなど口腔以外の話も笑顔でしてくださいます。

口腔の維持のためのケアと共に噛むことや食事のアドバイスができることは、その方に寄り添うサポートができているのではないかと感じています。

また、同じ施術でも人により傷の治りに差があるとか、同じ方でいつもと同じに見える所見でも易出血になっているとか、栄養学の知識は臨床で出会う疑問を解いていくときの引き出しになると感じます。

自分の臨床経験から、特にメンテナンスは長期的に患者さんと関われることで効果や価値が得られるのではないかと感じています。単に口腔だけに関心を示すのではなく、健康でより良いQOLを維持してほしいと願う思いをアドバイスを通じて伝えたいと思っています。

まとめ

テレビの健康番組では、いろいろな情報が流れています。流行りごとのように誇張された健康食品などの情報も飛び交っています。その方の口腔に合わせて適正なホームケアの方法を伝えるように、情報を整理してその方に応じたアドバイスができるように栄養学に興味を持ってほしいと思います。

口腔の炎症と全身疾患の関係や低栄養の影響が問題視されるようになっている今、歯科衛生士には、多くの知識が求められていると感じます。

 

成田瑞映

成田瑞映

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自費のメンテナンスを担当。
患者さんの経時的な変化を診ていく臨床の場で口腔と身体の関わりを実感し、分子整合栄養医学を学ぶ。口腔ケアとともに栄養についてのアドバイスも行なっている。
口腔の健康だけでなく、患者さんの健康を長期にサポートできることをメンテナンスの目標としている。

オーソモレキュラー.jp認定栄養カウンセラー
メディカル・サプリメント・アドバイザー

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