歯科医院の人材不足は数年前からの課題であるにも関わらず、その課題は一向に解決することがありません。働き方改革と言われ、残業をなくそう、休みを取ろうと改革を進める医院もありますが、周りの環境を整えるだけが本質ではないことを現場の人は皆知っています。人材不足を解消するためには、採用をすることと、既存のスタッフが継続して働ける組織の風土作りが必要です。
その取り組みとして注目を集めているのが、「オンボーディング」です。
この記事でわかること
オンボーディングプログラムとは
組織に対する人材の定着と即戦力化を目的としていた、新卒社員や若手社員だけに限定することのない中途社員や経験を多く積んできたプロフェッショナルなど全ての新規社員を対象とした新しい人材定着プロセスを言います。
オンボーディングの背景には、人材育成の費用対効果(ROI)の低さに悩む人事部や経営者の姿がありました。 時間と人材を割いて新規採用を行っても、戦力として成長する前に早期退職してしまう。 あるいは、戦力まで育ったとしても、数年後には退職してしまうなど人材定着率が低すぎるなどがあげれらます。
恋愛に例えて考えてみる
入社が決まった人材を恋愛のステップで例えるなら、お付き合いの始まりです。 「この人となら幸せになれるかも!わくわく!でもちょっと不安もあるな」 という状態ですね。
歯科医院の人材育成で、オンボーディングプログラムがないというのは、 お付き合いの直後に恋人を放置してしまう残念な彼・彼女ということになります。恋から愛に発展していくためのファーストステップは、大事にしたいものです。
歯科医院における人材育成を、恋愛のプロセスで考えてみると、最初のファーストステップの大切さがわかると思います。見て覚える、時間があるときに教える、とはなりません。また、ただマニュアルがあるだけ、動画があるだけでも人は育ちません。
オンボーディングプロセス
オンボーディングプログラムは、新入社員が入社してから、3か月の研修を経て患者を担当するようになるための3か月間の研修プログラムです。また、既卒者や経験者にも別途研修プログラムを立案し、医院の考えを共通認識した状態で患者さんを担当してもらうプロセスです。
経験者はすぐに患者を担当してもらいたいと思うかもしれませんが、経験者こそ医院の考えをしっかりと理解してもらうべきです。「前の医院ではこうでした」「私はこの方がいいと思います」「それは非効率です」そんな言葉を一度くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか。まさか、このメルマガを読んでいる方は発言したという側ではないと思います。医院で長く働いて欲しいからこそ、医院の理念に共感してほしい。医院のメンバーと同じ方向に進んでほしい。そういうメンバーと医院作りをしていくためにオンボーディングの考えが必要になるのです。
医院メンバー全員で育てる
相談事としてよくあるのは、新人が入社しても他のスタッフは全く教えようとしないんです。というものです。研修担当がいると、新人教育は自分の仕事ではないと、全く無関心という先輩。そういう雰囲気があると、新人は自分は無視されているのではないかと勘違いしてしまったり、教育担当の先輩以外には何も質問ができない状態になってしまったりします。
単純に考えて、それでは教育効果も低く、育つ者も育ちません。オンボーディングでは、医院スタッフ全員で新人を育てることで、組織の仲間意識が育ち、医院全体が新人の入社を歓迎していることが新人にも伝わる状態の雰囲気を作ることも大切だと考えています。
スタッフ全員が教育を理解する
では、それはどのように行うのかというと、まずは、オンボーディングの仕組みを行うことを全医院に伝えることからはじめます。その際に、「入社当時はそんなことなかった」「これまで通りで良いと思う」などの意見が出る場合があります。そういう意見が出ないように、医院全体での取り組みを行うことを伝えます。その伝え方として「医院の患者さんも増えてきたし、スタッフも開業当初からいえば増えているからそれに応じて体制も整えていくために新しいことを取り入れて、みんなが働きやすい環境にしていきたいと考えている」と伝えましょう。
カレンダーで共有する
次に、研修の計画をカレンダーに書き込み、誰でも見れる状態にしておきます。そうすることで、いつどんな研修をしているのか、どこまで研修が進んでいるのか、実技のテストがあるのか、筆記テストがあるのかなどメンバー全員が把握することができます。
例えば、カレンダーをみて、新人研修に無関心だったスタッフが「明日は実技テストだね。頑張ってね」と声をかけるような場面や、「もうこんなに進んでいるんだね。もうすぐデビューだね」とコミュニケーションのきっかけになったりなど。カレンダーに書き込み、誰でも見れる場所に掲示しておくことで、医院全体で育成していく雰囲気作りに役立つツールとしても活用することができます。
PDCAを遂行できる
また、カレンダーに書き込み、いつでも確認できる場所にあることで、PDCAのサイクルを滞りなく遂行することができます。診療が忙しくなってしまい、ついつい後回しにしがちなミーティングや面談の時間を最優先事項として考えることができるようになります。
これまでのように、当日のアポイントの状況を見て教えることを決めるというスタンスから、目標に向かって学んでいく計画があるスタンスで、より生産性のある人材育成が実現していきます。
まとめ
歯科医院における人材育成を、恋愛のプロセスで考えてみると、最初のファーストステップに何をするればよいか見えてきます。人材育成には事前準備と医院全体の教育体制が必須です。人を雇うにも膨大な求人広告費をかけているわけですから、それを無駄にしないためにも「育てる」ことに注力しましょう。
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一般社団法人DHマネジメント協会
代表理事 塚本千草
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