スタンダードプリコーション

スタンダードプリコーションとは

患者さんの問診をみて、患者さんの自己申告により感染症だとわかった場合、みなさんはどのような対応をしますか?

感染症だから感染患者用のユニットに座っていただいたり、感染患者用の器具を用意したりしますか?その他に普段は使用していないゴーグルをしてみたり高水準消毒液を準備しなきゃ!!とかバタバタしていませんか?その考え方や対応で大丈夫ですか?

25年前の感染症対策

私が学生の頃に学んだのは感染症と確認できたものに対してしか対応をしていない時代でした。

だからよくB型肝炎の人だとかC型だとかカルテにマークをつけたり、ユニットにカバーをつけたりして「この人は特別」な雰囲気の中で診療をしていました。現在ではナンセンスな話です。

今の時代では「すべての人が感染症を持っている」という考えのもとに感染症対策を行います。これが現代の考え方の「標準予防策」になります。

スタンダードプリコーションとは

スタンダードプリコーションとは「標準予防策」のことで、その考えは「すべての人が感染症を持ってる」という考え方です。

感染源を「涙と汗以外の湿性の体液は感染物質」として取り扱うのが医療での基本的な考え方になります。

日本では「標準予防策」とよびます。感染症の有無よりも、皆が「何らかの感染症を持っているかもしれない」と考える考え方です。

感染者はどこにいる?

身近な例に例えてみましょう。

毎年の様に流行するインフルエンザ。インフルエンザウイルスに感染すると1~3日の潜伏期間を持って発症します。ですから近くに居た人がインフルエンザを発症すると自分も感染しているのではないかとドキドキした経験ありませんか?感染から発症までの期間にタイムラグがあるのです。

インフルエンザは比較的感染から発症までが短く、高熱などの全身症状を伴いますから本人も辛いですし、周りも理解をしやすいですね。

同じ様に肝炎ウィルスで考えてみましょう。

こちらは感染者と接触しても発症までの潜伏期間が状況にもよりますがB型肝炎で最短2週間から最長6ヶ月です。感染していても自覚症状がインフルエンザのようにはっきりと現れませんし、発症しないまま、持続性感染者(キャリア)になっている可能性もあります。また、感染者が感染していると気づいてないケースもあるのです。

なので、キャリアになっていても感染している自覚がないので歯科を受診するにしても問診に自ら申告をすることはできませんね。

私たちは患者さんに問診票に記入して診察に入ることがほとんどです。そこに書かれた既往や患者さんの情報は大切なのでもちろん考慮しますが、患者さんの体内で「知らない間に」とか「自覚なく」起こっている感染症に対して対応できないことが現状なのです。

検査をしても確認できない期間

採血して感染症を診断するにしても「ウインドウ・ピリオド」と呼ばれる空白時間があります。この期間は感染してから、検査で検出できるようになるまでの空白期間でこの期間内ではたとえ何かに感染していても検査ではわかりません。

例えば患者さんに「最近、血液検査をしましたが何も問題ありませんでした」と申告があったとしてもウインドウ・ピリオドの期間に当たって入れば何も検出されないだけなので安心はできないことになります。

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日本でのHIV

東京都福祉保健局のwebページにもありますが、AIDS・HIV感染者は先進国の中で日本が増加し続けています。B型肝炎では2011年度で110から125万人、C型肝炎は100万から150万人です。

今月、あなたは何人の患者さんに会いましたか?

まとめ

感染症の有無の申告に関わらず、標準予防策(スタンダードプリコーション)の概念で医療行為を行うことが現在の考え方です。感染症者用の器具を作るなどして感染管理を行なっているクリニックは今一度考えを改めてみてください。

 

一般社団法人DHマネジメント協会
歯科衛生士 第2種滅菌技士 長谷川雅代

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長谷川雅代

長谷川雅代

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歯科衛生士/DHマネジメント専属インストラクター
「自ら積極的に清潔を促す行動ができる歯科衛生士仲間を増やしたい」の思いで院内の感染管理の周知のために活動中。
年に数回の講座を担当し、訪問セミナーも行う。
日本医療機器学会 第二種滅菌技士
日本アジア口腔保健支援機構 第一種歯科感染管理者の資格を所持。

歯科衛生士として臨床も続け、感染管理を広める活動の傍ら、スラッシュキャリアとしてウェディングブーケデザイナーとしても活動中。

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